2010年06月02日
西東小話とおしらせ
イベント参加予定とか発行予定とか更新しましたー。
余裕の入稿する予定が、実は普通に締め切りギリじゃね? ていう。
スピード的にはやっぱりデジタルは助かるなあ……
それとは関係なく、眠気覚ましに書き出したぷりきあ西東小話がそれなりに形になったのでのせてみます。
西×東つうより東→西です。
小話だから流れるよー。
半年ぶりに生活を共にした彼らは、やはり少しは変化していた。
「あ~いい湯だった~」
バスタオルで濡れた髪を掻きむしりながら、彼がリビングに入ってきた。心までふやけたような緩みきった笑顔で。ええ、それはそれはご満悦そうでなによりですけどね。
「……ウエスター、お風呂から出たらなにか着てっていってるでしょ」
読みかけの本越しに彼を盗み見て、わたしがうんざりした声で呟くと、彼はバスタオルを首にかけて不服そうに反論する。
「だって風呂あがりにすぐ服着ると暑くてさあ。いいじゃんか、パンツはいてるんだから」
「風邪ひいたって知らないわよ」
「そうなる前にはちゃんと着るって」
もう、人の気も知らないで。
わたしをお気楽にあしらって、カウンターの奥のキッチンへと姿を消す。冷蔵庫の開閉する音がして、よく冷えたアルミ缶を手に戻ってきた。
わたしの隣に腰を下ろし、片手だけで器用に栓を開け、噴き出した泡をすするように口を近づけてごくごくと飲み下す。
ぷはあっ、と息を吐くと、余韻に浸るように目をかたく閉じ、幸せこの上ないとろんとした声を出した。
「ああ……んまい……」
「ほんと、おいしそうに飲むわね」
「そりゃあほんとにうまいからな。おまえも飲むか?」
と、半分ほど減った缶をわたしに向かって振ってみせる。
「未成年にお酒勧めていいの?」
「飲ませてやらねーっていおうと思ってたんだよ」
わたしの返事が気に入らなかったようで、つまらなそうに毒づいてから残りを一気にあおった。
どうでもいいけど、いつまでも半裸のままでそばにいないでくれないかしら。
お風呂あがりに缶ビールを一本空けるのは、どうやら四つ葉町で身についた彼の習慣のひとつのようだった。
確かに彼はあちらの世界の文化を積極的に吸収していたけど、わたしがまだ一緒に暮らしてた頃は、こういう、お風呂あがりにビールなんて、いかにも俗っぽいというか、あきらかにあちらの世界に感化されたであろう習慣はなかったはずだ。そもそもラビリンスには缶ビールなんてなかったし。
「いつの間にお酒飲むようになったの?」
本に目を落としたままわたしが問うと、ウエスターは声色もそのままに答えた。
「そうだなあ。はっきりとは憶えてないが、たぶん夏頃だったな。夜に町にいくと、よく気持ちよさそうに酔っぱらってるおっさんがいたろ? 酒とはそんなにいいものなのかと思って買って飲んでみたんだが、その時はうまくもなんともなくてな。なにが楽しいんだと思ったもんだ。ところが、しばらくして風呂あがりに冷たい物が飲みたくなったときがあって、仕方なく残ってたビールを飲んだんだが、これがびっくりするほどうまくてな。それ以来風呂あがりのビールは欠かさなくなったというわけだ」
「じゃあ、お風呂あがり限定?」
「そういうこだわりはないけど、風呂あがりが一番うまいからな。別にすげえ好きってわけでもないし、一日一本そこで飲めば充分」
「そうなの? ラブのお父さんは夕食のときにもたまに飲んでたわよ」
「おまえが大人になっていっしょに酌み交わせるようになったら、そういうのもいいかもしれないな」
そういって、わたしの頭を大きな手で包み込む。お風呂あがりのせいなのか、お酒が入ってるせいなのか、いつもよりあたたかい気がした。
「サウラーと飲めばいいじゃない」
「だってあいつ、酔うとますます嫌味っぽいっていうか、説教始めるんだもん」
「ああ、わかる気がするわ」
つい笑って顔を上げると、彼の胸元が意外に近くにあって、思わず身を固くしてしまう。
「なんだ、どした?」
「どう……もしないけど、そろそろ服着たら? 髪も乾かした方がいいわよ」
動揺を抑え込みながらなんとかそういうと、彼は、そうだな、と呟き、わたしの頭の上でぽんぽんと手を弾ませてからゆっくりと立ち上がった。
「おまえも早く風呂入って寝ろよ」
「はーい」
……大人になったら、か。
どうなったら大人扱いしてくれるのかしら。
二十歳になったら? お酒が飲めるようになったら? 背が伸びたら? 彼の裸が平気になったら?
――この調子だと、一生子供としか見てくれないような気がする。
せめて、子供扱いか妹扱いか、どっちかにしてくれたらね…
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- at 00:20

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